八戒が引き出しの中を探すと、絆創膏はすぐに見つかった。
ひとつ取り出して引き出しを閉めようとした時、
あるものが目についた。
密封された透明の包装。中には5センチくらいの針が入っていた。
「悟浄、これは?ニードルですか?」
「あっそうそう。懐かし〜。昔使ってたのよ。
ピアスとか入れ墨とか入れるスタジオで働いてるときにさ。」
「悟浄が?意外ですね。」
つい本音が出た。がさつで大雑把な男だと思っていたが、意外と器用なのかもしれない。
「ピアスならどこでも開けたな。耳だけでなくて舌とか鼻とか唇とか。へそもあったし。性器も。」
「へえ〜。そんな仕事してたんですねえ。」
そう言いながら八戒は絆創膏をつけ、台所に戻った。
八戒は料理を再開しながら思った。
あのニードルをこの体のどこかに刺したら・・・
その時自分は何を感じるだろう。
ねえ悟浄、僕にピアスの穴、開けてください。」
めずらしく八戒と一緒に(いつも賭博に行くから)
夕飯を食べて、酒を飲みながらだらだらしてる時、
唐突に八戒が言ってきた。
「はあ?お前が?どういう風の吹き回しよ。」
「入れてみたくなったんです。舌に。」
しかも舌。耳でなくて舌。
言いながらちらっと八戒を見たつもりが、悟浄は八戒に釘付けになる。
美しい翠色の瞳が妖しく光って、口元はうすく笑っている。
妖艶で、獲物を狙う獣のようだった。
歓楽街の奥の方にある飲み屋に行くと
たまに男娼を見かける時があるが
こんな目つきの男がいれば間違いなく売れっ子になれるだろう。
悟浄が初めて見る八戒だった。
この男が一体ピアスの何に興味を持ったのかは知らないが
今の八戒と無表情の八戒が交錯して
心のどこかがピリッと痛みを感じた気がした。
八戒の顔に見入ってしまい、なんと返事したのかもあやふやだ。
「ありがとうございます。」
八戒の言葉で我に返った。
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