「じゃ、いくからな。」
必要な備品をそろえて(幸運にもニードル以外の備品も残っていた)舌を消毒する。
ビニールの手袋をはめた悟浄が、間近で八戒の顔をのぞきこんだ。
舌は悟浄が押さえてるから、八戒はコク、と軽く頷いた。
緊張して手のひらが汗ばんでいる。
プッと舌を貫かれて、衝撃で思わず背中をしならせてしまう。
悟浄が手際よくピアスをはめると
鋭い痛みがじんじんとやってきたが、
舌が痺れて痛みでいっぱいになるのが心地よい。
しばらくは痛みに陶酔していたが
痛みに慣れてくると、やがてこの痛みが消えてなくなるであろう事への恐怖が生まれた。
次は何で心を満たせる?
穴を拡張する?体にピアスを入れまくる?
痛みによる陶酔と、言いようの無い不安がどっと押し寄せて、
八戒は自分が、笑いたいのか、泣き出したいのか
全く分からなくなった。
悟浄は八戒の顔をじっと見つめていた。
ふっと微笑んだと思えば、
八戒は悟浄に見つめられてる事にも気づかず、上の空だ。
胸が痛む。
痛々しくて見てられないような、かまいたくなるような気持ち。
「八戒、舌見せてみ。」
八戒は、はっと我に返り舌を出した。
ピアスの入り具合をチェックする。
「口、閉じていいぞ。しばらく痺れるから。無理するなよ。」
八戒はやはり舌が痺れているらしく、コクとうなずいた。
その瞬間。
思わずキスした。
数秒間だけ。唇が触れるだけのキス。
「ワリ。」
「なんれす?」
八戒は驚いて聞いたが、舌がまわってない。
「お前がしけたツラしてるから。そんだけ。」
数秒間のキスは、悟浄の心に暖かい何かを残した。
自分は八戒に何か残せただろうか。
悟浄は考えた。
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完。金原ひとみの「蛇にピアス」の影響をもろに受けてます。
旅に出る前。つきあう前の話。