第6話 (捲簾)

「ほらね、雨降って地固まったでしょう?
僕のお陰で、自分に素直になれて良かったですね。」
「・・・・っ!それをてめえがいうな!
っつーか俺はあん時の事、許したわけじゃねえからな!
覚えてろよ!」
この野郎。自分の手柄のように言うなバカ。
あん時、一体自分が何したのか分かってんのかこいつ。
・・・覚えてろよ。

午後。ガキ2人は外に遊びに行くというので
それを見送った後のこと。
台所で後片付けの続きをする天蓬の腕を、
強引に引いて抱き寄せた。
「ちょ・・・っ・・・捲簾?」
天蓬が拭いていたボウルが、がらんと音を立てて落ちる。
そのまま息も付けないようなキスを。
とっさの事でまだ戸惑ってる天蓬の
唇を割って、逃げる舌を追って、責めて、しゃぶってやる。
「ちょ・・・待って・・・部屋で。」

水音の間から聞こえてきた天蓬の主張は無視して
足を割り入れて、軽く突き上げてやる。
「んんっ・・・!」
すっかりペースを乱されて不意をつかれた
天蓬が声をあげた。こないだとはうって変わって
この、余裕の無い顔と言ったら。
人の感情を無視して襲った罰だ。
その上一人で勝手にイキやがった。そこが、ずっとひっかかってる。
俺とやってるのに、だ。それが腹立つ。

ファスナー下ろして下着の中に手を突っ込む。
すっかり熱を持ってかたくなってるそれを、ゆっくり扱いてやると
天蓬の顔が、赤くなった。息づかいも荒く。
目を逸らされても逸らされても顔を覗き込むと、最後は睨まれた。
「こないだの勢いはどうした?今日はずいぶん大人しいな。」
「いちいち、見ないで、いいです、って。嫌な、人、ですね。」
「こないだお前に散々されたからな。
つーかこないだアレはセックスにも入らねえ
ただのオナニーだ。お前が敖潤とする遊びと一緒だ。
いいか、今は俺とやってんだから、誰と何してんのか。
誰にどこ触れてんのか、よっく見ろ。」
「!」
そうして尖端に触れみると一気に濡れてゆく。
とっさに反らせた顔を首根っこ捕まえて、こっち向かせる。
なるほど。この男も余裕無くしてこんな顔することがあるのか。
赤く染まった顔。きゅっと噛まれた唇。潤んだ目。
その目で、根負けしたように、お願いされた。
「・・・早く、入れて。」

やばい。
ああ俺は、俺達は、今まで何やってたんだろ。ホント。
始めっから素直に、こうやってお互いを求めれば良かったのに。
それができなくて、長い長い遠回りをした。
だが。
後悔は先に立たない、ことはない。
あとはもう、歯止めが効かず
天蓬をその場に押し倒して脱がして脱がされて
やわらかくて、あったかい天蓬の熱に、包まれて。
俺の体を這う天蓬の手も、心地よくて。
喘ぐ、その顔に、目に、声に、煽られて
お互いすぐに達した。

「捲簾・・・もうちょっと、このまま・・・。」
「ん。」
冷たい台所の床で、お互い抱き合ったまま離れられなかった。
天蓬が愛しげに俺の頬を撫でる。その、心地よさ。
その手をぎゅっと握ると、ふふ、と笑い声が漏れた。

これからずっとこんな感じで、一緒に、そばに、いられる。
今まで意地張って殺したり守ったりしてきたことを
捨てられた。やっと。

きっと、あいつらのお陰なんだろう。

 

外が暗くなる頃。八戒と悟浄が帰って来た。
2人とも葉っぱやらが服についてたから、順番に払ってやった。
どこで遊んで来たんだこいつら。

まず、悟浄の裏返ったパーカーのフードを直してやる。
ああ、こんな風にこいつの世話焼くの、いつぶりだろう。
こいつはいつからこんな手の掛からない子供になったんだろう。
こいつが我がまま言わなくなったのって、いつからだろう。
人の顔色読んで自分を抑えるような奴。
『こんのクソオヤジ!』
夜中にこいつに蹴られた事を思い出しつつ。
全部直してやって、頭をくしゃっと撫でてやると
「なんだよっ」と照れた。

次は八戒。
八戒もシャツについた葉っぱを払ってやって服を整えてやる。
同じく頭を撫でたら、こっちは嬉しそうにしてくれた。
今日の事は八戒が無理にでも言ってくれなきゃ、
どうなってたんだろう。
昔も今も、俺はどうしようもないアホなのに
手を差し伸べてくれるのはいつもこのガキ共だ。
昼飯作って一緒に食べただけで、あんなはしゃいで。

恵まれてんな、俺。

「よっし。今から4人で晩飯食いに行くぞ。
何食いてえ?お前ら。」
「焼き肉行こうぜ焼き肉!」
「寿司かなあ。」
「僕は何でも。」
なんてやり取りしながら家を出ると、日が落ちていて。

街頭に照らされて、一列になって歩く俺ら4人の影が、
真っすぐに伸びていった。

 

▲家族計画