第2話 (天蓬)

乾いて乾いて仕方がないのだ。
親子の枠も恋人の枠も超えて捲簾を自分のものにしてみせる。
と息巻いてはみたものの、捲簾のガードは固く何も進展しなかった。
だから。
欲しくて欲しくてもうどうにもならないから。

一服盛ってみたのだ。

学校行事かなんかで悟浄も八戒も泊まりがけで居なかったある日だった。
後にも先にもこんな好機二度と無い。
帰って来た捲簾を誘ってリビングで酒を飲んだ。
どんどんおだてて飲ませて1時間後。彼は自らの異変に気づく。

「・・・っお前、何した?」
「そろそろ効いてきましたかね?
・・・催淫剤ですよ。」
「はあ!?嘘だろ!?っっ信じらんねえ!
催淫剤とかサラッと笑って言うな!」
「さすがに、自覚症状出て来たみたいですねえ。」

水を取ろうと伸ばした捲簾の手を掴んだ。
そのままカーペットの上に押し倒す。
「水飲んで排泄しようったってそうは行きませんよ。」

「はなせ」
「逃がしません。」
鼻先数センチの距離で楽しくてしょうがない僕と僕を睨む捲簾。
睨まれてるのに。今ここには自分と捲簾しかいなくて、
こんな近距離で捲簾に見つめられているという
心地よさで体が爆発しそうなほど。

「どけ」
「とか言いつつあなた・・・体はしっかり反応してますけど。」
密着した下半身が、ちょうどその部分が、熱い。
「んなわけ分かんねえ薬と酒、一緒に飲めば
当たり前だろ!薬科大の院生がこんなことしやがって。
下手したら死んでるぞ!つーか警察沙汰になんぞ!」
「・・・こうでもしないとあなた、自分の気持ちに素直になれないでしょう?」
「うるせ・・・!・・・っん」
そうやって、またがなり出すから、キスして唇を塞ぐ。
舌で唇をこじ開けて捲簾の舌と絡める。
あったかい。気持ち好い。溶けるみたい。
初めてキスしたあの時のような。

下着とスエットを同時に下ろして
捲簾自身に触れた瞬間、ひく、とそれが震えた。
体を引き離そうと僕の肩を掴んだ捲簾の手が、
性欲に負けて段々力を失ってゆく。
「ッ・・・やめろ・・・!」
重ねた唇の間から漏れるささやかな抵抗。
ここでやめるわけ、ないじゃないですか。

下だけ脱いで捲簾自身をあてがう。
早く欲しくて、何も考えられない。
性欲に従って体が勝手に動く。
「っ・・・ぁあ!」
思わず仰け反った。
今までの妄想のそれよりもはるかに熱い。
圧迫感にたまらず声が漏れるくらいの。

腰を動かしてぎゅう、ぎゅう、とさらに奥まで入れる。
それだけでじわじわわき上がる射精感。
腰を動かせば、もうだめ。
捲簾自身が出し入れされるそこが、
たまらなく気持ち好くて夢中で腰を動かした。
まるで虫や動物の交尾みたいに。
自分の口から漏れる声もあぁ、とかはあ、とか
全然言葉になってない。
ただただ欲のままに体を高めていく。

「待て・・・っ!これ以上は・・・」
捲簾の声がしたような気がしたけどそれどころじゃあない。
この、角度が、好い。もっと、もっと、そこに、欲しい。
気持ち好い。もう、もう・・・頭が、真っ白になって、いく・・・
「あ・・・だめ、も・・・イキそ・・・!」
「ッ・・・・!!」
吐き出された精液がシャツを汚す。
その時、僕の中の捲簾自身もひくりと震えて
精液を吐き出した。

「はあっ・・・はぁ・・・」
「はぁ・・・」
リビングに、捲簾と僕の荒い呼吸だけが響く。
「お前、さ」
まだ息が荒い捲簾が、話しかけて来て我に帰る。
「これで、満足なわけ?」
捲簾はさっきと違って睨んでない。
笑ってる。けど顔が歪んでる。
「お前、自分でぶち壊しやがったな。」
そして「どけ」と一言言って結合を解くと
リビングを出て行った。乱暴にドアを締めて。

『お前、自分でぶち壊しやがったな。』
捲簾の言葉。捲簾の表情。捲簾の目。
捲簾がくれるものなら、どんな目でもどんな感情でもうれしい。
それからしばらく、リビングでひとり、反芻した。
セックス後の虚脱感がに支配されながら。

それから。
捲簾とは口をきいていない。目も会わせない。
向こうがそうしてこないから。
それくらい僕の事頭にきてるって事でしょうか。
それはそれでうれしいですけど。僕で頭が一杯って事だから。

でも、以前にも増して、乾く。
あれだけ欲しかったものを手に入れたのに。いまいちすっきりしない。

「天蓬さ、オヤジと喧嘩した?」

目の前にいる悟浄にすら、嫉妬する。
捲簾と同じ目、捲簾と同じ顔立ち。
捲簾の遺伝子がこの子の中に入ってるなんて。
悟浄の髪を撫でる。この赤い髪は母親の遺伝。
僕は会った事もない、悟浄を捨てた母親。
捲簾との子供を作るなんて。

腹の底から今まで感じた事もないような
黒い気持ちがぶくぶく浮かんで来る。

『いやぁあなたのお父さんと念願かなって
セックスしたんですけどねえ。
すっきりしないんですよぉ。どうしてなんでしょうねえ。』
なんて。

言いませんけどね。
そんな事知らずに目の前の悟浄は、口を尖らせて俯いている。

 

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