第5話(捲簾)
悟浄が事務所を出て1時間くらい過ぎた頃、携帯が鳴った。
『あー、もしもしぃ?捲簾さんの携帯ですかねえ?』
とチンピラの声。
懸念していた事が起きた。
「そうですけど。」
『今日うちの組のモンがオタクの所の八戒を指名したら
「八戒は病欠」とか言って天蓬とかいうの寄越したじゃん?』
「そうですね。」
『そしたら別のモンが
その辺フラフラしてる八戒目撃してさあ。
捕まえて問いつめたら、仕事ばっくれたって言ってんのね。』
「はあ。」
『はあ、じゃねえよ!!オタクの店どうなってんの!?』
うぜえ。
俺は携帯を耳から離した。
こいつらは俺をヤクザの事務所に来させたいだけだ。
そしてこいつの兄貴分が出てきて、俺は組に勧誘されると。
何年前からだろうか。
この辺の歓楽街をシマにしているヤクザに目を付けられて
事あるごとに勧誘される。
そのつど適当に断ってるけど。
八戒が金を借りてる所も、八戒を連れてきた女衒も
元を辿ればこのヤクザにたどり着く事は知っていた。
ただ全部が全部断り続けるのはさすがにまずかろう、と
八戒を雇った矢先にこれだ。面倒くせえ。
だから八戒と連絡つかなくなって、焦ってたんだけど。
しかし。
起きたもんは騒いでも仕方が無い。
相手は詫びに来い。来たら八戒は返してやる。
と喚いているので
「申し訳ありません。今お詫びに伺いますので。」
と適当に言って、電話を切った。
「出かけるのですか?」
天蓬が、言う。
悟浄がここを出て行った直後くらいに
八戒の代打が終わって、フラリとここにやってきたのだ。
「いや?」
目の前にいる天蓬を見据えて言った。
目の前といっても、ソファに座る俺の股の間。
天蓬は客に飲まされた変な薬がなかなか抜けないと言って
地べたに直接座って、俺の膝の上に頭をのせている。
とろんとした目。
愛でてやりたいような、怖いような。
「俺が行くなんざ一言も言ってない。」
そう言って髪を手ですいてやると
気持ち良さそうに目を閉じて
ふふ、と笑った。
猫みてえ。
悟浄に電話をかけた。
あいつならうまくやってくれる。そう、うまく。適当に。
八戒も組の連中に捕まったとはいえ、
奴らの目的は俺だから、変に痛めつけられてはいないはずだ。
2、3発殴られてるかもしれんが
まあそれは自業自得ってことで。
中々出ない。
コール音が鳴り続ける。
そのタイミングでだ。
見計らったかのように天蓬が
俺のズボンのチャックを一気に下げた。で、中をまさぐる。
中からソレを取り出して一気に奥まで口にふくんだ。
やると思った。
「・・・っ!」
ねっとりと濡れて暖かい口の中に包まれて
快感が一気にクる。
『もしもし?』
ちょっとして、やっと悟浄が出た。
そのころにはもう、完勃ち。
『捲簾?もしもし?』
「あぁワリ、八戒のことだけど。」
全身の神経を総動員して平静を装う。
そんなのお構いなしに、天蓬の舌は俺を追い立てる。
「○○組の事務所にいるから迎えにいってやってくれねえか。」
『いいけど。拉致られた?』
「イヤ、サボってフラフラしてたところを見つかった。」
『あんの阿呆。りょーかい。じゃ行ってくるわ。』
「すまんがよろしく。」
短くすませて電話を切った。
悟浄は俺と組との厄介な事情も分かっているから話が早い。
「惜しい。」
銜えたまま天蓬が少し笑った。
通話中にイカせる気だったらしい。
「・・・っ・・・堪えた、からな。」
電話が下手に長引いたらどうなっていたか分からない。
こいつの舌にかかればどんな遅漏の客でも短時間で達する。
じゅるっと吸われて強烈な射精感。
「・・・っ責任持って全部飲めよ。」
「んっ・・・・」
しっかし。
『「八戒は病欠」とか言って天蓬とかいうの寄越したじゃん?』
『その辺フラフラしてる八戒目撃してさあ。
捕まえて問いつめたら、仕事ばっくれたって言ってんのね。』
チンピラの言葉を反芻した。
・・・不気味なくらい嫌なタイミングでバレたな。
天蓬はそんな事考えてる俺にぎゅっとしがみついて、
ごく、ごく、と口に出してやった精液を飲んでる。
愛でてやりたいような、怖いような。