第4話(悟浄)

今朝の出来事を思い出した。

「曇りって、嫌ですよねえ。」
朝帰りしたらリビングに八戒がいて、
いきなりそんな事を言ってきた。
窓の外を眺る顔は青白くて、表情もない。
寝てねえのか?
「このままどこにも行けないような、
何にも出来ないような気になってくる・・・。」

「ふうん。」
とか適当に返事しつつ、
逆流してきた昔の気持ち。
生みの親は心中してて
育ての親は俺を憎んでて、居場所なんてなくて。
毎日胸くそ悪くて。ずっとその繰り返しで。

未来永劫そんななのかよって思ったら
たまらなくなって、家を飛び出て
女と酒と賭け事と暴力と、
悪い事も一通りなんでもやって
ちょっとはましになった今日このごろ。

八戒は、これからどうなんの。
ずっと体売って借金返していかなきゃならなくて
逃げれば金貸しの後ろにいるヤー系に
とっ捕まってボコボコ?
悪くしたらバラされて臓器売られて
骨と皮だけになっちゃう?
八戒は、どこにも逃げられない。

そんな考えが頭をぐるぐる回ってる。
「ねぇ悟浄、今日なんか上の空じゃない?」
賭博場。女が隣で笑った。
今日はウリの仕事が無いから
早い時間から賭博場に来ていたが、負け続き。
駄目だ。賭けなんかしてる場合じゃない。
バカだ。あいつもバカだけど、俺も。

「ワリ、今日はここまでにしとくわ。」
「ちょ・・・悟浄?」
賭博場を出て、捲簾の事務所へと走った。
 

「捲簾!八戒と連絡ついた!?」
勢い良く事務所のドアを開けると
捲簾にビックリされた。
「おぉ、全然連絡つかねえ。」
「じゃ、俺探して来るわ。」
捲簾は意外そうに「お前が?」と突っ込んできたが
「俺今日ウリの指名ないじゃん?
あとさっきまで賭博場いたんだけど負けまくってさ。
することねえから。
それにあいつと連絡つかねえの、
金貸しの方にバレるとマズいんだろ?」
とかなんとか言ったら
「じゃ・・・頼むわ。ワリィな。」とあっさり引いた。

そしてジャラリといかついチェーンに繋がれた
ごつい財布から、万札を何枚も抜いて。
その万札を俺のシャツの胸ポケットにぐしゃっとねじ込む。
「これでしばらくあいつのこと、よろしく頼むわ。ワリィな。」
捲簾も捲簾なりに八戒が心配っぽい。
そんなにヘビースモーカーじゃなかったはずなのに
灰皿には吸い殻が山になってるし。
「俺のことは気にすんなって、どうせ
あんたが色々やると天蓬がうるせえだろ?」
茶化して事務所を飛び出すと
背中から「るせえ、だまれよクソガキ。」と捲簾の悪態が聞こえた。

この時。
八戒のことは心配しつつも
俺は妙に浮かれてた。
許された気がしてた。
根っからゴロツキの俺が、
八戒に関わっていいんだって。

深く考えてなかったんだ。
自分が最低なことしてるなんて自覚もなくて。

 

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