第16話(捲簾)

悟浄とやりあった日の、翌日。
事務所の中は荒れたままだった。
あれから片付けもなにもしてない。
唯一したことといえば、管理人のおっさんに適当なこと言って口止めしたくらいか。

ふらりと天蓬が現れて、他人事のように言った。
「すごい壊れっぷりですねえ。」
「昨日、悟浄が来てな。」
「あ〜ぁ。」
あ〜ぁだけかよ。
天蓬はいたって普通だ。
いい気味だと笑うでもない。
いつも通り。
ふんわり微笑んでる。

「その割に冷静ですね。これからどうするんです?」
天蓬はテーブルの破片を指でつつきながら尋ねた。
「全部家具屋に任してる。
費用は今後悟浄の給料から分割して天引き。
パソコンはバックアップとってるから問題なし。
片付けやらは女にでもやらせるわ。
だから全て問題なし。」
「女の人って、こないだ知り合ったったいう、飲み屋の?」
「そうそう。」
天蓬はへえ、と言って黙った。
俺も特に話す事もないから黙る。
お前はあるんじゃねえのか。言うことが。色々と。

天蓬の胸ぐらを掴んで引き寄せる。
「おっと。」
天蓬は不意のことで少しだけ驚いたが、
どうしました?といった表情で俺の目を見据えた。
事の顛末は分かってるはずなのに謝罪も弁解もない。
そして俺が大してダメージを受けてない事への不満。
顔見知りの女に片付けさせる事への嫉妬が入り混じってごちゃごちゃって所か。
これで引き分けって事にしといてやるよ。
と言ってやった。目で。
俺がどんだけ胸糞悪い思いをしたか、伝えきれないことは、
これで伝えるってことで。

「あ・・・・はっ・・・ぁ」
盛大に水音を立てて乱暴に口腔を貪る。
まともに息ができず、身を引いて逃げようとする天蓬の腰を引き寄せた。
苦しそうに顔をしかめ、手でばしばし俺の肩を叩いて抗議する。
腕の中で身をよじる体を力ずくで押さえつけると
加虐心てやつがじわじわ湧いてきた。

そろそろいっか。
唇を解放してやってソファに押し倒した。
昨日、タバコの火をもみ消したソファ。
天蓬は息を整えながら、何してくれるという抗議と、
これから始まる事への期待とが入り混じった顔で俺を眺めてる。
天蓬のベルトを外して、下だけ全部脱がす。
あーあ、がっちがちじゃねえか。
ああいうのがいいのね。

じゃあ触ってやんない。

人差し指と中指を一度自分の口ん中に入れて濡らした。
「っ・・・・」
完勃ちですでに濡れてるそれには触れず、後ろを解す。
天蓬は中指の先が当たるところを触ってやると悦ぶが・・・
今はただ解れればいいから、これも触ってやんない。
天蓬はもどかしそうな顔を手で隠した。
この状況で触ってなんて死んでも言わねえだろうな。
でもお前はそれが好いんだろ。
下は完勃ちで、後ろは解すだけの指を
物足りなさげにぎゅうぎゅうと締め付ける。
食いしばった歯から漏れる吐息。

お前のそういうところが、いいんだよ。
嘲笑ってやると、そんな暇あったら早く入れろと言わんばかりに
眼がぎろりと睨んでくる。

クルねえ。その顔も。
おかげで俺ももう完勃ちだ。
早く入れてえ。

こっちも下だけ脱ぐ。
雑に解した天蓬のそこに、俺のがどろっどろに濡れてるのが丁度良く、
ぎちぎちと入っていく。
待ちわびたと言わんばかりにきゅうきゅうと飲み込んで
早く動けと言っているようだ。
「うぅっ・・・あっ・・・はぁっ」
天蓬が苦しげに喘いだ。
やっぱきつかったかな?
いつものコールボーイの演出とも分からない喘ぎと違って本当に苦しそうだ。
俺はその顔も後ろの具合もすげえ好いけど。

苦しげなまま、天蓬がポツリと呟いた。
「別に、彼らの仲を引き裂こうなんて、
意地悪したいわけじゃあ、ないですよ。
再生されるのを、見てみたかっただけ。
あの、ふたりって、純愛ぽいから。」

再生、ね。
返事もせずに続けた。
肌と肌とがぶつかる音がするくらい激しく動く。
「あっ・・・あぁっ・・・」
雑に解したそこも、ようやく馴染んで水音を立ててる。
天蓬も苦しげな表情を少し緩めた。

つまらんな。

普通、誰に対しても最中そんなことはしないが、衝動に駆られて。
首を絞めてみた。少し息ができる程度に。
「っ!・・・んんっ・・・!」
後ろが、締まって一層俺のに絡みつくようで。
もっていかれそうになる。
はくはくと震える唇。
はは、好いね。

天蓬は首を絞めるのをやめさせるでもなく、
相変わらず手で顔を隠している。
泣いてるのかもしれない。
いや、ないかな。
髪を撫でてやりたくなったけど、やめた。
やめといた。

口では何も言わない。お互いに。
俺たちはいつもこんなんだ。

 

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