第14話(悟浄)
ここまでブチキレたのは久々だ。
昔から、キレると頭が真っ白になってわけが分からなくなる。
気づいたらケンカ相手だけでなく仲間にも手を出してたとか
周りのもん破壊しまくるとか、色々あった。
事務所の中のもんを片っ端からブチ壊す。
とにかく壊す。
壊す。
捲簾。あんたが悪い。
あんたが。
そんな時、捲簾の回し蹴りがモロに入って、ようやく素に戻れた。
「るせえ。元はてめえが悪いんだろ。
てめえがあいつ狂わして野放しにしてるからじゃねえか!」
言った瞬間、捲簾の回し蹴り。
そのまま派手に倒れた。
一瞬息が止まる。
やっと息ができる頃には胸やら背中がガンガン痛んだ。
逆に、頭の方はどんどん熱が引いてって。
捲簾が、すかさず体重をかけて首を絞めてきた。
苦しくて苦しくてたまらない。
「てめえにガタガタ言われる筋合いねえんだよ。
あいつが頭おかしいのはあいつの問題だ。
今後つまんねえ言いがかりつけて俺んところきたら殺すから。
今日は失せろ。」
一方的にやられてんのに、苦しいのに、なんかおかしくなってきた。
だって捲簾がブチキレてる。
あの捲簾が。
やっぱ天蓬の事、突かれんのは痛いって事ね。
そしたらなんか、キレちゃってる捲簾になんか言ってやりたくて。
「奴だと思って、しっかりしめろよ。クソ野郎。」
次の瞬間、髪を掴まれてそのまま階段に落とされた。
直前に捲簾の口端が引きつったように見えた、気がした。
階段の角にあちこちぶつかって、いちいち滅茶苦茶痛い。
いつまで続くんだって思って体を丸めて耐えてたら、ふいに終わった。
どうやら一階まで転げ落ちたみたい。
「あんちゃん大丈夫か?」
管理人室からおっちゃんが出てきた。
「だ、、、大丈夫。大したことねえよ。」
やっとの事で立ち上がる。
身体中、感じたことないくらいぐわんぐわん痛むけど、骨は大丈夫っぽい。
自分の手を見たら血まみれだった。鼻血と、額かどっか切ったか。
大丈夫、なんとか歩けそう。
しかし捲簾の奴やっぱ只者じゃ無い。
っていうか、何もんだ。いくらバッド振ってもあたりもしねえわ、容赦ねえわ。
その辺のゴロツキとは何か違う。容赦のなさが。
意識しないと手加減できないタイプだ。
つーか、天蓬の事言われるのはすげえ嫌なんだろう。
なのにあんな関係って。わけわかんね。
まああっちの事は考えなくていいや。
ここはもういい。
行かねえと。
とにかく歩き出した。
体を引きずりながら歩く。
あちこち血が出てるからタクシーは無理だろう。
つーか通報されちまう。
通行人がぎょっとしてこっちを見てる気配。
あー、事務所から家まで大した距離じゃねえのに、、、
一歩一歩歩くのが辛い。すげえ時間かかる。
八戒。
はやく、帰んないと。
八戒に、話さないと。
やっと、マンションが見える通りまで出てきた。
部屋には灯りがついてる。
八戒。
八戒。
とにかく俺の話、聞いてくれよ。