第1話(天蓬)
昨日の出撃中のことだった。
目標物であるところの妖怪は2〜3メートル級が5体。攻撃組は僕と捲簾大将を入れて壱班から参班の9名。
2人一組で1体を倒して、残った1体は捲簾大将が1人でやると名乗り出たため、任せた。
彼には1人で対処できるくらいの実力があることは誰もが知っていたし、念のため手が空いた者から彼のバックアップをすることにして。
特段難しい任務でも無かったのだが。
事件が起きた。
僕も攻撃に参加していたので、通信組や他の隊員が目撃したことを総合するとこうなる。
攻撃の合図と同時に、捲簾大将は目標物に約2メートルの間合いをとって対峙した。
いつもの通り、瞬時に銃口を向けた。
しかし。
引き金を引かない。
微動だにせず。
目標物が、捲簾大将に向かって間合いを詰めたその時、
『総員、捲簾大将を援護!!』
通信組の永繕が叫んだ。
結局。
近くにいた隊員に足を払われた捲簾大将は、後ろに倒れギリギリのところで目標物からの攻撃を回避。とっさに攻撃組のツーマンセルの片方が一斉に捲簾大将の目標物に麻酔弾を打ち込んで、間一髪間に合った。
隊員達は日頃の訓練の成果を発揮し、よく動いたと思う。瞬時に自分の相棒に各々の目標物の処理を任せて捲簾大将の援護に回ったのだ。
他の妖怪も無事処理してけが人もなし。捲簾大将が後頭部を打ったくらいか。
捲簾大将は「悪い、足がすくんじまった。」などと話していてその場はなんとなく収まったが、普段は闘神ばりの働きを見せるこの男のそんな話を鵜呑みにする者などいないだろう。
永繕が隊員を代表してと言わんばかりに『どうします?』と視線を投げかけてくる。
とりあえず、『僕がなんとかします』と視線で返しておいた。
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