僕も悟浄のこと、好きですよ。ごめんなさい。
じゃああの人のことは忘れてしまうのか。もともと好きじゃなかったのか。
忘れませんよ。そして・・・いやそうじゃなくて。
じゃあ僕が殺した人はどうなるのか。
それは。
悟浄の好意にぬくぬく甘えてるだけじゃないのか。
本当に好きなのか。
好きになっていいのか。
あの人を忘れてしまうのか。
どうしてあの人は僕の前で。
ぼくのことが嫌だった?
助けに行くのが遅すぎた?
悟浄との生活にだらだら浸ってたから、
最後の最後まで救えなかった?
もうやめて、だれか、助けて。
だれか。
悟浄。
ねえ悟浄。
・・・・。
今日やっと。
ひとつの結論が出た。
多分、それですべてカタがつく。そうすると全てが落ち着く。自分の中で。
「悟浄。」
昼過ぎ。いまだぐうぐう寝てる悟浄の首に、手を添えて
ぐっと力を込める。
ぱちりと目を覚ました悟浄が逃げられないように。
両手に力を込めたまま悟浄の上に跨がる。
「もう、消えてくださいよ。全て、貴方が悪い。」
寝込みを襲われ僕にぎりぎり首を絞められる悟浄は
まだ状況が把握できていないものの下から刺すような目で僕を睨めつける。
「あなたが気まぐれに好きとかいうからこんなにも苦しいんです。」
僕の指に悟浄の指が食い込む。
どちらの指も千切れそうなくらい、強く。
ああ、僕の指、千切ってくれて構わないですよ。
「貴方大事なもの持ったこと無いとか言いましたね。
傷つくのが怖いから自分から人を避けてるだけじゃないですか。
遊んでるふりして。みんなに適当に愛想振りまいて。でも冷めてるふりもして。
取り繕って「無難」にやり過ごしてるだけです。」
悟浄が渾身の力を込めて僕を押しのける。なんて力。
はずみでベッドの下に倒れる。体のあちこちが痛んだが無視して
酸欠から解放されてゴホゴホしてる悟浄目がけて、気功。
手のひらに力を集中させる。
悟浄、ごめんなさい。手加減しないから。反撃してください。
「その無難の延長で好きなんて軽はずみに言わないでくださいよ。
信じちゃったじゃないですか。
鬱陶しいです。」
本当は僕のことちゃんと好きだってこと知ってますよ。
とっさに枕で防ぐ悟浄。
気功で枕が破裂して中に入ってた沢山の羽根が舞う。
「そんな中途半端な気持ちで
僕とあの人との間に入らないで。」
僕が悟浄に甘えてただけ。
僕が悟浄をちゃんと好きになれなかっただけ。
悟浄の好きに応えたくて応えたくて応えたいのに。
でもそうすると
逆にあの人が僕から遠のいて苦しい。
もう一度手のひらに力を集中させる。
発したらこの部屋ごとどうにかなるくらいの力を。
両手が見たことも無いくらいの光に包まれる。
「だからお兄さんにもお母さんにも捨てられるんです。
貴方は結局どこに言ってもひとり。」
お願い断ち切って。貴方の手で。
錫杖の鎖がひゅんと飛んできて、僕の腕を捕らえる。
そう。その調子。
ぐん!と引き寄せられ堪えきれず倒れるとそこに。
錫杖の、ひやりとした刃が首に押し付けられた。
そう。それで一思いに。どうか。
『僕を殺して』