もうやめて、だれか、助けて。
だれか。
悟浄。
ねえ悟浄。

ある日。
なぜか俺だけ三蔵から呼び出しをくらった。
せっかく来てやったのに部屋に入るなり
いきなり右ストレートが飛んで来る。

殴られるなんざ全っ然思わなかったから
まともにくらって派手にすっ転んだ。
「てめ、何すんだよ!!!」
見上げると三蔵は三蔵で超不機嫌な顔。
「お前な。」
「ああ!?」
「お前八戒に何言った?」
え?何って。三蔵が俺を睨む。
「何って、なんだよ一体。順序立てて話せ!」
「バカ河童が。」
舌打ちして聞こえるようにそう言った。落ち着け俺。
ぶち切れそうになるのを抑えて話を促す。
普通だったら即!殴り返してるが、八戒のことならまず話を聞きたい。

「最近の八戒。悪くなる一方だろ。」
「ああ。」
「お前奴になんかしただろ。」
「!?何で断定なんだよ!?」
「お前しかいねえだろ。悟空と話してるときは普通なのに、
最近どうだと自分のこと聞かれただけで、言葉は出てこないわパニック起こすわだ。
この前は悟空との会話もままならなくなって、最近じゃパッタリ来ねえ。
奴の行動範囲といったら俺のとこ、お前の家。市場ぐらいなもんだからな。」
「そうは言ってもな。別に傷つけるようなことなんざ・・・」
「ったく使えねえ。」
と言って煙草に火をつけた。朝から連続で吸いまくってるとみえて、灰皿は吸い殻で山になってる。
口は悪いが、なんだかんだ、こいつは心配性だ。

「・・・好きって言った。こないだ。八戒に。」
「ああ!?何だと!?」
今日一番のえらい剣幕で睨まれる。
「このバカ!」

帰り道。雨がぱらぱら降ってきて、
家に着いた頃には本降り。
引き出しから適当にタオルを抜いて濡れた髪をがしがし拭く。
「はっかい?いねえの?」
家の中には誰もいない。

ふと。窓の外に目をやると。
ざあざあ降りの雨の中でつったってる八戒がいた。
「八戒!」
「・・・悟浄」
駆け寄ると八戒はようやく我に返った。
酷い格好だ。裸足だし。ずぶ濡れだし。手に土が。傷が。
「雨、降り出したでしょう。育ててた野菜にビニールかけてやんなきゃと思って。」
てへ、と苦笑いしようとして失敗する。
分かってるよ。またいてもたってもいられなくなってトリップしてたんだろ。
小っさな家庭菜園にビニールかけたくらいで
そんなに手どろどろになるかよ。そんなに沢山の傷、つくかよ。
「来いよ。消毒しないと。」

汚れた足を奇麗にしてやって着替えさせてから
ソファに二人。八戒の手を手当てする。
ったくどこで何やったんだか。手の甲は切り傷やミミズ腫れでいっぱいだ。
幸い血は止まったし深い傷もなさそうだから良かった・・・のか?
救急箱(こんなのよく俺んちにあったな)に消毒液や傷薬をつっこんでたら
八戒が肩に額を押し付けて来る。俺の腰に腕を回して、ぎゅっと抱きしめて来る。
いつもの、合図。
「ねえ、悟浄。」
こういう時どんな顔すれば良いのか未だに分からない。
俺は極めて何事もなかったかのように、さらっと聞いた。
「ん?・・・する?」
何も言わず肩に額を押し付けたまま、こくこくと頷く八戒。

『好きだよ。八戒。ごめん。』
何も考えずに思ってる事そのまま言ってしまった。
きっと俺はそう告げれば八戒をもっと混乱させることは薄々分かってた。
だから。無意識にごめんと付け加えたのだろう。

でも。好きだ。
八戒ごめん。好きだ。
俺はお前に何してやれるんだろ。
何をしたら楽にしてやれるんだろ。

今お前の頭ん中、どうなってる?
本当はセックスしたいとは、思ってねえだろ?
でも俺はこんなことしかしてやれねえの?

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