「じゃあ火曜日は?」
「火曜はー・・・経理の新人ちゃんのところかな。」
「水曜日は」
「制作部の安田んとこ。」
「あの方とも・・・?」
「昨日どこ行ったかは聞かねえの?」
金曜日。仕事の帰りに天蓬と飲んで、
終電も無くなったんでこいつの家に泊まる事にした。
連続外泊記録更新中。自分ちに帰ったのっていつだっけ。
ここ一ヶ月、あほみたいに仕事が忙しい。
特にこの一週間はピーク。終電を逃しては女の家に転がり込んでる有様だ。
そして天蓬は、こいつの家に行く道すがら、
俺がいつ誰の家に泊まったかなんて意味の無い事を聞いて来てるわけだ。
きっと今のこいつの頭ん中は嵐だ。
怒りと嫉妬心とがぐちゃぐちゃに入り交じって。でも聞かずにはおれない。
聞けば聞いたでいろんな気持ちが乱れに乱れる。
それなのに。
別に貴方がどこに泊まろうが関係ないし興味もありませんけど
という姿勢を装う。
だだ漏れだけど。
まあそれくらいこいつの気持ちはこいつでも制御不能というわけだ。
ものぐさで好き嫌いがはっきりしすぎていて
嫌いなものはいっさい受け付けないし
好きなものは好きなものでストライクゾーンが極めて狭いこの男が
制御不能になるくらいの気持ち。
それが俺に向いている。
なんて快楽。
だから俺はいろんな女の所転がり込んでは色んな女を抱いてまわる。
こいつの嵐はいっそう大きくなる。
それを肴に酒を飲む。そんなこいつを嬲るように抱いてやる。
なんて快楽。
「あ、コンビニ寄っていいか?」
天蓬のうちの近くにあるコンビニ。
明日の朝飯でも買っていくか。こいつんちどうせ何もねえし。
「はい、じゃあ僕そこで煙草吸ってます。」
灰皿のところで煙草に火をつける天蓬。
背中を丸めて火をつける。
一瞬火に照らされる、制御不能な感情を抱えたその顔。
飯以外にもビールやらつまみやら買い込んで
外に出ると
雪がちらつく中、天蓬が腕をだらりと下ろしてつったっていた。
その手には血がべっとりついた包丁を持って。
「たった今。女達を始末してきました。
目触りなんで。」
なんて今にも言いそうな程の。
実際は俺の勝手な想像だけど。
人を殺して来た後みたいな、清々しいのに狂気を抱えたような顔してたから。
手にはナイフなんて無くて短くなった煙草があるだけ。
その天蓬が、言う。
「何買ったんですか。そんなに沢山。」
「だって、ほら、3連休だから。3日分の飯。」
「そんなに僕のところにいるんですか?」
喜怒哀楽すべてが制御不能のようだ。
顔と裏腹に、わずかに声が弾んでる。
「そーよ、3日間、ずっと一緒。」
3日間ずっと。
一緒にいてやる。
抱いててやる。