第7話
八戒が施設に運ばれて来た時は、酷い状態だった。
怪我で体の自由がきかない八戒の世話係を任された俺は、
奴の体を拭いてやる時、服を脱がして言葉を失った。
全身に切り傷や火傷の跡。腹には自殺未遂した時のものだという大きな傷跡。
他にも腕は骨にヒビ。顔を酷く殴られたかして右目は駄目になってる。
ぼろぼろに傷ついて一言も喋らなくなった八戒に、
俺がしてやれる事なんて何も無かった。
どんなに近くで世話しても、話しかけても、
八戒は何も話さないし表情も無い。
最後に、明日この施設を出てまたペットショップに行くのだと
伝えた時でも、表情を変えず身じろぎもしなかった。
奴はきっと、生きる事も何もかも諦めて放棄している。
死刑宣告してるようなあの重い気分。今でも忘れられない。
八戒は今、どうしてるだろうか。
八戒の事を思い出してて、言われた事がさっぱり頭に入ってこなかったが、
ついこの間、俺を天蓬の飼育員に指名したお偉いさんに呼び出されて
ハッパをかけられた。
頭に入れたくもないが、なにやら
「愛玩は売れるようになるまで育てるのに金がかかる。
売れて初めて利益が出るのだ。」とか
「愛玩市場の需要も低年齢化が著しい。
プロトタイプはもう良い年だ。
ここらで売りにださないと、このまま売り手がなければ
処分も検討しなくてはならんぞ?」とか一方的に言われた。
あーうるせえうるせえ。
あんなの真面目に聞いた日には、目の前のおっさんを瞬殺してるだろう。
天蓬を、売りに出す事はできない。八戒のような目にあったらどうする。
かといって、ここに残す事もできない。
そろそろ潮時だ。今、計画を実行する時。
だから、こうしたんじゃねえか。
金蝉の方を向いた天蓬の頭めがけて、分厚い本を振り落とす。
いつかこいつが俺にしたように。
金蝉、そんなに驚く事じゃねえだろ。さっき言ったじゃねえか。本気だって。
お前は分かってくれるよなあ?
金蝉の腕の中で奇麗な顔を晒して気を失ってる天蓬に言った。
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