第4話

本を読む事。そして
自分の飼育員をいびり倒して退職に追い込む事が僕の唯一の楽しみ。
飼育員は毎度青い顔したり顔を引きつらせたり大泣きしたりしながら
この施設を去って行く。
この施設で僕が受けた苦痛に比べたら小さいものだと思うけど。

しかしあの男は何をしても何を言ってもこたえないから不思議だ。
僕が逃げ出せば本気になって追いかけ、へらへらしたり兄貴面したり。
一方で気に入ったと言ったら取り乱すわ
その上僕を売り飛ばす気は無いと言う。

そんな事言われたら
ますます楽しくなるじゃあないですか。
今までも恐らくこれからも真っ暗に決まってる僕の人生に
そんな余計なもの必要ないのに。
自分が一体どうしたいのかすら分からない。
どうしてやろうあの男。

そんなことをぐるぐる考えるのも
煩わしくなって、またふらっと外に出たくなった丁度その時、
あの男が食事を運んできたから。
「メシだぞー」とやる気のない声で言うこの男の後頭部めがけて。
その辺にあった分厚い本(の角)で思い切り殴ってみたら。

どさり

男はあっさり倒れてぴくりとも動かなくなった。

 

えーと、殺しちゃったでしょうか。
てっきり「痛てえ!」くらいの声を上げるかと思ったのに
何も言わずに倒れ込むなんてこっちが驚く。
そういえば人を殺さない程度に殴る力加減なんて知らない。

いつかのようにごろりと仰向けにして
顔を近づけてみたら普通に呼吸しているようだ。
えーと、えーと、呼吸しているわけで生きているのは間違いないとして。
どうしよう。
少し待っていたら目を覚ますものでしょうか。
倒れた男の周りをぐるぐる歩く。落ち着け。
こんな時はどうすれば。

とりあえず自分も床に寝転がって間近で様子を見てみる。
そうしたら急に「う〜ん」と言いながら目を覚ましたので驚いた。
びっくりして逃げる事も取り繕う事もできず、
焦って適当な事言ったら、「バカ野郎」と怒られた。

ああ、こうしてまた動いてくれてよかったです。
そう思ったら無性にさわりたくなって髪を撫でた。
ああ、今だ頭の中では自分が一体どうしたいかなんて分からないままなのに。
なぜだろう。
体が勝手に動いてゆく。
首を持ち上げたこの男に吸い寄せられるようにして、キス。

舌が入ってきて絡み付く感じ。
唇から伝わるこの男の体温。
漏れる水音。
すべてが今まで感じた事も無い心地良さ。

ああ、落ちてしまう。

 

天蓬視点。

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