第5話

結局三蔵に適当な事言いくるめられて、俺は八戒を買った。
気の迷いというかなんというか自分でも説明できない。

さらに不思議な事にこの愛玩を風呂に入れてやってる。
家事だの雑用だのさせりゃいいだろと言われて買ったのに
これじゃ逆にこっちが世話してんじゃねえか。

というのも簡単な契約後に
「こいつ2番目の飼い主に痛めつけられて
その傷がまだ完治してねえんだ。腕があまり上がらないみてえだから
しばらくは風呂だのなんだの手伝ってやれ。」
と三蔵が言いくさりやがって、それ契約後に言うか?と文句言いつつも
連れ帰ってこうして律儀に風呂に入れてやってるんだから俺も人がよすぎる。

目の前には全裸の八戒が背を向けて座っており
俺はシャワーを上からかけてやって泡を流していた。
しっかし細っそい体に女みてえに生っ白い肌。
そして無数の傷。
よくここまでされるまで我慢したもんだ。
行き過ぎたSMってやつ?
何があったか今は聞けねえけど。

俺はあんまSMは好きじゃない。軽い縛りとかならそそるけど。
だいたいお互い気持ち良くなりたくてやってるのに
なんでわざわざ痛いとか苦しいことせにゃならんのだ。
前に1回だけやった女で、ロウを垂らせとか殴れとか言ってきた奴がいたが丁重に断った。
そんかわりにこれ以上無いくらい気合い入れてやったけど
結局その女はイケなかった。俺には理解できん。

風呂からあがった八戒に適当に服着せて
さてとりあえず今日はソファーで寝てもらいますかと
洗面所を出ようとしたその時。
後ろから八戒に抱きしめられた。
風呂上がりの、せっけんの香り。

「あ?なに」
振り向くと八戒の表情を覗き見る隙もなく
首筋を舐められた。
生暖かい舌先がぺろ、と喉仏のラインを沿う。
「ん・・・ちょ・・・八戒?」
ちゅ、ちゅ、と軽いキスを交えながら八戒の唇が
段々上に上がっていき、髪を掻きあげられたと思ったら
耳たぶを舐められた。
鳥肌が立つ。
「ちょっ・・・タンマ・・・!」
「遠慮、しなくていいですよ。」

初めて八戒の声聞いた。
ずっと無表情だったわりには穏やかな調子の声。
このままずっと喋らねえんじゃねえかと思ってたから安心した。
いや安心してる場合じゃない。この状況。俺、襲われてねえか?
体中にあんな傷があって心身共にまだ病み上がりきってもいない奴とやる気は無い。
というか、やっちゃいけない気がする。

そんな事考えた数秒の間も、八戒は俺の耳たぶを口に含んだり
耳の淵を舌先で舐めたりするわけで、その度ゾクゾクと鳥肌が立つ。
俺耳弱いから。マジやめろ。
「な、八戒。やめ・・・!!?」
突然舌先を耳の中に突っ込まれた。
ぐちゅ、ぐちゅ、と大きな水音と、体が一瞬にして熱くなるような快感。
「は・・・ッ」
唇を噛んで息が漏れるのを押さえる。耳舐められてこんな気持ちイイの初めてだ。
いやいやいや・・・ここで止めさせないと俺、こいつに喰われる。

「八戒やめろ」
「うそ。そろそろここ、触って欲しいでしょう?」
さんざん耳を嬲られて、十分すぎる程熱をもった×××をジーパンの上から
何度も撫で上げられる。
「・・・っ!!」
そのままその場に押し倒されそうになる。
「いいから待てって。」
そう言って八戒の肩をつかんだ時。
八戒の顔をやっと見る事が出来た。
翠色の瞳と視線が合う。
ペットショップの時と変わらない無表情な顔。
いやむしろ目は虚ろとも言える。

そんな目して人に抱かれようとしてんじゃねえよ。

「待てとか言って、なすがままじゃないですか。」
バカ野郎。
病み上がってねえお前に手荒な真似出来ねえから
さっきから口で抗議してるんじゃねえか。
八戒は俺の上に股がったまま、今着たばかりのシャツを脱ぎ始める。
ボタンをひとつひとつ外していくと露になる痛々しい大きな傷。
服を脱ぎきると腕を俺の首に絡めて
「僕の体の事を気にしてるんだったら、大丈夫ですよ。
腕はまだ上がらないけど。たいがいの事はできます。」
「あのな、たいがいって・・・」
「縛ってくれてもいいし。殴ってくれてもいいですよ。顔じゃなければ。」
何言ってんのおまえ。
「スカトロもなんとか。飲めと言われれば飲めるし。」
飲むって何を。
「圧迫系でもロウソクでもなんでも。」
圧迫?
「血が出るのでも全然大丈夫です。」
あのな。
「もうこの通りの体ですから。跡が残っても全然かまいませんし。
それにだんだん痛みを感じなくなってきちゃって・・・んんっ・・・!」

キスして口を塞いだ。
もういいって。
もうやめろって。

両手で頬を押さえたら、手に冷たい感触。

何泣いてやがる。

 

現在にもどって再び悟浄視点。

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