第3話

最初に施設を出る時。
園長先生が言っていた。
僕らは愛されるために生まれて来たんだと。
愛されなければ価値はない。存在してる意味はない。
そうならないように、精々飼い主にはめいっぱい媚を売って
ずっと愛されるようにしなさいと。

最初のご主人様はどんな人だったっけ。
もう顔も思い出せない。
花喃と一緒に飼われる事になったから、
全然怖くなかったし不安もなかったのは覚えてる。

朝、ご主人様の手が乱暴に僕の体を触るので目が覚める。
秘書らしき人間がベッド脇でその日のスケジュールを読み上げている
その最中に前戯もそこそこに挿入される。
昼はご主人様の奥様の相手。
夜はまたご主人様の相手。
僕は園長先生の言いつけを守ってご主人様と奥様の命令に必死で応えた。
舐めろと言われればどこでも舐めるし、どんな痴態も見せた。
ご主人様達からずっと愛されたかったから。必要とされたかったから。

でも、朝昼晩とお呼びがかかったのは最初の1ヶ月くらいだっただろうか。
飽きやすいご主人様達はまた新しい愛玩を飼って
僕たちは段々出番が無くなっていった。

とうとう出番が無くなって暇になった僕たちは
日がな一日自分たちの部屋の中で、
どうやったらご主人様にまた呼んでもらえるか
延々議論していた。
必要とされない愛玩なんて生きてく価値はない。
施設でずっとそう言われてきた。
このままずっと出番が無くなったら・・・と考えると怖くて怖くて
僕たちは必死だった。

忘れもしないある雨の日。

もっと嫌がる素振りをした方がいいんじゃないかとか
ここはもっと大胆に・・・とかそんな話をしていたらいつのまにか
「じゃあ、セックスしてみましょうか」という流れになり
どうやったらご主人様にまた必要とされるかで頭の中がいっぱいだった僕は
深く考えもせずに、花喃とセックスすることにした。

不思議な気分になった。

いつも僕を引っ張ってくれる花喃が
僕の腕の中で喘いだり、身を捩らせたり、恥じらったりする。
中は暖かくて、体がとろけそうだった。
心がじんわり温かくなってなんだかうれしくて
彼女の頬を両手で包み込んで気づいたらこう言ってた。
「好きだよ。」

ひょっとしてご主人様に必要とされなくても
花喃といれば大丈夫なんじゃないか?
花喃さえいれば。
花喃がいてくれれば。
それでいいんじゃないか。
僕は花喃が好きだ。

「好きだよ。」
寝る前にもう一度、言った。
花喃は暗闇の中でふ・・・と声を漏らした。
真っ暗でよく見えなかったけど
微笑んでいるようでもあり、泣いているようにも見える。
そしてそれが、僕が見た最後の花喃だった。

翌朝、目が覚めると、隣で寝ていた花喃は冷たくなっていた。
どこかから持って来たナイフを自分のお腹に刺して。
死んでいた。

だから僕は花喃の腹に刺さっていたナイフを抜いて
花喃がしたように自分のお腹にナイフを突き刺した。

ねえ花喃。僕をひとりにしないで。
ひとりは嫌だってこと、知ってるくせに。

ねえ花喃。どうしてあのときセックスしようと言ったの。
どんな気持ちで言ったの。
どうして死んだの。

遠のく意識の中で誰かの悲鳴を聞いた気がした。

 

話がとんで八戒視点。

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