第2話

店の奥には小さい部屋があり、そこに通された。
三蔵は愛玩の飼い方とか契約とか色々する部屋だって言ったが
だから俺は買うなんて一言もだな・・・!
しかし不思議なのは、部屋のど真ん中に人ひとり寝られるくらいの
ちっさいベッドがあることだ。
契約すんのにベッドなんて使うか?なんて色々考えてたら
さっきの翠目の愛玩と一緒に三蔵が部屋に入って来た。
「じゃあ、服脱いでここ寝ろ。」
三蔵がそう言って顎でベッドを指すと、愛玩は服を脱ぎ始めた。これまた無表情で。

「ちょ・・・おい!全部脱がなくてもいいんじゃねえの?」
愛玩が下まで全部脱ごうとするから慌てた。
だが三蔵は平然と言う。
「それが決まりだ。
愛玩は基本的に返品がきかねえからな。
状態を確認しとくのが大前提だ。
まあ、ここに至る経緯が複雑でな。それもあって」
「複雑ってなんだよ。」
「見てみろ」と三蔵が愛玩を顎で指した。
服を脱ぎ終えた愛玩は、何も言わず大人しくベッドに横になる。
その全裸の愛玩を見て、びびった。

まず腹に大きな傷。腕や足には火傷の跡がいくつもある。
よく見るとタバコを押し付けられたような跡もある。
腕には切り傷も。

「んだよ。これ。」
反吐が出る。胸くそ悪いったらない。
こいつがどんな目にあって来たのか俺でも簡単に想像できた。
安売りしてるわけも。

「一応義務だから説明するが。」
三蔵が何やらプリントを見ながら言った。

「こいつは最初の飼い主に買われてから3ヶ月後、
自殺未遂を起こして飼育施設に戻されてる。
この腹にあるでかい傷はその時の傷跡。

傷が完治してからまた売りに出されて
ほどなく買い手が現れたそうだが
この2番目の飼い主が問題で
他の傷は全部そいつにつけられたもんだ。

2番目の飼い主に捨てられて
また施設に逆戻り。
傷が完治して現在こうして売りにだされてるところだ。

こいつはさっきも言ったが愛想なしでな。
俺ら店員はもちろん他の愛玩・客に対しても
目合わせねえしだいたい話してるのも見た事ねえ。
まあこんだけ飼い主に恵まれなきゃあこうもなるだろうが。
だから自殺未遂に至った経緯も、
2番目の飼い主からどんな扱いされてたのかも分からん。」

三蔵が説明してる間、愛玩はあの翠色の目で
俺の事をじっと見ていた。

「体の傷はすべて切り傷と火傷。あと右目は義眼。
これも2番目の飼い主にやられたもんだ。」

体中傷だらけで笑いも話もしねえから安売りって。
なんなんだよ。
愛玩なんて金持ちの道楽で買われりゃ
犬猫と同じで三食昼寝付き。
飼い主とセックスさえしてりゃ楽な暮らしできるんだろうなー。いいなー。
くらいにしか思ってなかったけど。

翠の目はずっと俺を見ている。
助けてとか買ってとか懇願するわけでもなく。
こっちが見つめ返してもなんの感情も持たない目が、
ずっと俺の事を見ている。一体何考えてんだか。

三蔵が付け加えて言った。
「愛玩のプロトタイプってのがいて、
そいつがズバ抜けた美人らしいんだが
こいつはそれのクローンらしい。
プロトタイプは精神的に問題があって商品化できなかったが
こいつは人当たりが良く家事も一通りこなせるように仕込まれたって事で
愛玩の中でもランクは良い方で、初めて売られた時はかなりの高値がついてたそうだ。
それがまあ、こういう状態になってかなりの安値になってるわけだが・・・どうだ。」

「どうだって言われてもな・・・!
こいつが今まで大変だったってのは分かるけど
さっきも言ったけど買う気はねえよ。」
俺がそう言っても翠目の愛玩は無表情で俺を見つめ続けたまま。

「誰にも興味を示さなかったこいつが何故か知らんが
唯一お前に興味を持った。
お前さえよけりゃあ、こいつもやっと落ち着くかと思ったが。お前嫌か?」
「嫌かって言われても・・・」
男と言えどかなりの美人だし、正直タイプかと言われればタイプの顔だ。
つっても一人気ままな堕落生活にいきなり愛玩って。
女とも一緒に暮らすのはごめんなのに。

「さっきも言ったが家事全般・・・料理・掃除もできるように仕込まれてる。
使用人として買ったっていいだろ。」
それは便利・・・かもしれねえがちょっと待て三蔵。
お前、俺にこいつ押し付けてねえか??

「出せねえ金額でもねえだろ。」
「バカ野郎。賭博でメシ食っててその日暮らしの生活してる俺が
そんな金どっから・・・」

そういえば。

金なら、ある。
こないだ勝ちまくって
ちょうどそんくらいの金が家に・・・
確かあった。

どうする。俺。

 

▲愛玩動物