第1話

三蔵が転職に成功したって聞いたから冷やかし半分で
勤め先のペットショップとやらに行ってみた。
あの万年仏頂面が。ペットショップってツラか?

そのペットショップは珍しくも歓楽街の奥の方にあるとか。
分っかりにくい路地を通って雑居ビルの3階。
ちっさい看板が出てた。ここだ。
看板をよく見てみると

「ペットショップ 愛玩専門」

と書かれていた。
そおいうことかよ。

前にテレビで見た事がある。
人の遺伝子で作った人型のペットを通称『愛玩』と言う。
ペットというと聞こえは良いが、要はセックスできるペットってこと。
限りなく人に近いリアルなダッチワイフみたいなもんだ。
人型だけど人でないから人権なんてない。
そんなのが一応法に触れない、合法だってのが不思議な話だが。
どっかの施設で作られて、教育受けて(どんな教育か想像するだけでわくわくするけど)
こういうペットショップで売られる。
価格はピンキリだけどだいたい車買うのと同じくらいっつったっけ。
生殖機能はないから浮気して子供できちゃったとか
そういう心配しなくていいし、風俗みたいに病気うつされる心配も無いってんで
なんだかんだ需要があって急成長してる商売らしい。

入り口に立つとういーんと音をたてて自動ドアが開く。
店ん中入った瞬間、びびった。

狭い店内の両側の壁にはショーケースがずらっと並んでて圧倒される。
ただショーケースが並んでるだけなら
犬とか猫が売られてる普通のペットショップと変わんねえけど。
さすが愛玩は人型なだけあって、いっこいっこのショーケースのでかいこと。
そして薄暗い店の照明とは反対に、それぞれのショーケースにはスポットライトが
当てられてて、中に入っている愛玩が鮮明に浮かび上がる。

俺好みのビキニ着て長い髪をかきあげるセクシーな女。
いいねえ。さすが売り物。芸術品かっつうくらいのナイスバディ。
その隣はセーラー服着た高校生くらいの女がにこにこしてる。
その隣のショーケースにはさらに若い(幼い)のが
スクール水着着て客に笑いかけてた。
こんな若いのも商品なのかよ。俺的にはパスだな。
と思ったらショーケースに売約済みの文字。
そして金額は・・・7,000,000円。
うーわどんな奴が買ったんだろ。
他にも色んな愛玩の女、女、女。

「気に入った女はいたか?悟浄。」

ぼけーっと愛玩眺めてたらいきなり声掛けられて
死ぬほどびびった。んだよ三蔵かよ。
「初めて来たけど・・・こりゃすげえわ。
どの女も肌といいプロポーションといい人形みてえだな。」
「まあ売りもんになるように遺伝子いじってるみてぇだしな。
色んな好みに対応できるように
女によっても性格も違うし見た目も違う。
まあてめぇの懐具合じゃあ手も足も出ねえだろうが。」
言われて周りを見回せば、600万とか900万なんて金額はザラ。
店内に数人いる客もよく見たら身なりの良い社長風の野郎とか
明らかにヤー系な派手なスーツ着たおっさんとか。
その通り過ぎて突っ込めねえ。

「2階もあんぞ」と三蔵が言うので促されるまま螺旋階段を上ると
2階は男の愛玩が展示されていた。10代の少年風なのから俺くらいの年の奴まで様々。
これまた女同様、良い値段しやがる。
上から下までブランドもんの服着た金持ちそうな女が
店員にあれこれ聞いてる。男の客もいた。

そんな中。2階のフロアの隅っこで、椅子に腰掛けて本を読んでる奴がいた。
こんなところで読書にふけこむとは、変わった奴だ。
「ああ、あいつはわけあって特売品だ。お前でも手が届くぞ。」
「あれも商品なのかよ!?」
ショーケースに入ってないから客かと思った。
近づいて見てみると『お買い得!わけあって498,000円!』の値札。
愛玩も安売りされるとは世も末だ。

そいつはここにいる愛玩の中でも飛び抜けて美人だった。
ぬけるように白い肌。整った顔立ち。線の細い体。
シャツにジーパンといういでたちで、足を組んでひたすら本を読んでる。
俺らが目の前で話をしていても他の愛玩のように愛想振りまくでもなくおかまいなしだ。
目がきれいな翠色だったので顔を覗き込んでみたら

その翠色と目が合った。

ガキの頃飲んだラムネのビー玉みたいな。

透き通った翠。

その翠も俺の瞳をまじまじと見つめている。

「珍しいな。こいつは誰にも関心示さねえんだけど。
俺ら店員にすら目え合わせるなんてまずねえし。
気に入ったんなら奥でもっとよく見せてやるぞ。」
「は?俺はいいって・・・!」
つかなんだよ。わけありって。
慌てる俺をよそに三蔵はこの愛玩を俺に押し付ける気らしい。
俺を店の奥に促すと翠色に向かって言った。

「来い。八戒。」

 

ペットショップで売られる「おつとめ品」八戒。

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