再会は、突然だった。
「忘れちまうなんて、ひどくない?」
その男、捲簾大将はそう言った。
忘れていた訳ではない。
「・・・元帥閣下の幕下にてよろしくお引き回しの程
お願い申し上げます。・・・ってカンジなんスすけど」
なんて、しらっと他人面して言う方が悪い。
その時『もしかして』と気づいて、
その後一緒に掃除してタバコを吸ううちに
それが確信に変わってはいたものの、タイミング悪く
出陣命令が出て、『帰って来たら切り出してみようか』
なんて考えていた頃に、捲簾から先に切り出されたのだった。
「『またあとで』なんて言っておきながら
どれだけ時間がたったと思ってるんです。
そういうあなただって。僕の顔、忘れてたんじゃないですか?」
軍服に袖を通しながら天蓬が言う。
「しょうがねえだろ。俺だって忙しのよ。身辺整理とか色々。
あとあれはカマ掛けただけだって。
まぁあの天蓬元帥がまさか本の山からお出ましになるとは
思いもしなかったっていうのはあったけど。」
捲簾は、天蓬の着替えをじっと見ながらおどけて言う。
視姦されてるみたいだ、と天蓬は内心そわそわする。
「俺はちゃんと覚えてたけどなぁ。あんたの顔も・・・」
最後にブーツを履いて、着替え終わった天蓬の耳に唇をつけて、囁く。
「・・・体も。」
とたんに天蓬の体が、あの時の事を思い出してざわざわ疼いた。
「終わったら、続きな。」
捲簾が正面から見据えてそんな事を言うから、
天蓬は任務に向けて頭を切り替えるために
自分の中のありったけの理性を総動員して、
今にもぐらつきそうな体と欲情を押さえ込んだ。
天蓬はまた、自分の中の何かが崩れていく感覚を覚える。
東方軍から転任・・・だと?
任務の時間だけ考えても、圧倒的な時間をこの男と過ごす。
そんな事したらどうなる。
こんな男とずっと一緒に居たらきっと自分は変わる。変わってしまう。
あの目に見つめられたらきっと何でもできてしまう。
全部が快楽に繋がっていく。そんな予感がした。
「・・・っがっつき過ぎだっつの・・・!」
「お互い様、ですって・・・んっ」
任務後。部屋に入ると速攻で靴を脱いで
もつれ合い互いの服を脱がしながら、バスルームに向かう。
「相っ変わらず白いな。下界に行っててもこれか。」
「体質なんですよ。そういう貴方は何やったらこんなに筋肉つくんです?」
捲簾の上着を脱がして厚い胸や腕が露出すれば
天蓬はあの時自分はこの体に抱かれていたのかと
改めて思い出してさらに興奮したし、
天蓬の軍服を全て脱がせて、自分それとは全然違う
筋肉の薄い、軍人とは思えない程の白い肌がむき出しに
なった時、捲簾もまた夢中になった体を思い出し、
たまらず首筋に顔を埋めた。
「んっ・・・!」
「すげ・・・楽しいかもこれ。」
シャワーから流れる熱い湯に打たれながらふたり、
息を荒くして石けんでぬるりと滑る互いの裸に
手を這わせて、キスして、抱き合った。
ぎゅう、ときつく抱き合ったのが少しでも離れてしまうのが
なんだか惜しい気がして、抱き合ったまましばらくお互い
動けないこともあり、しまいにはどちらともなく笑みがこぼれた。
早く繋がりたいはずなのにと。
それもようやく落ち着いた頃、天蓬が跪いて
捲簾自身を舌で捉えると、捲簾は言った。
「しゃぶってみろよ。見ててやるから。」
そのまま銜え、唇で丁寧に扱きあげる。
天蓬の髪を撫でる手も、口元も優しげなのに、
じっと見つめる目だけは、笑っていない。
その切れ長の目に射抜かれているだけで
天蓬はどうしようもなく体が高ぶっていくのが分かった。
捲簾から目を離せず、見つめたまま口で、舌で、愛撫する。
じゅる、と吸うごとに、口の中のモノが硬く、熱く、形を変えていく。
「・・・っも、抜くぞ。俺にもさせろ。」
「・・・こんなに、濡れてるのに?」
捲簾が自身を天蓬の口から引き出すと
先走りとも唾液ともつかない糸がひく。
「そういうお前も、濡れてるだろ。しかも触ってもいねえのに。」
そう言って、かつて天蓬がそうしたように、足先で
天蓬自身をなぞると、そこはとろとろと露を溢れさせていた。
「あっ!・・・ん」
「相変わらず、いい体だな。銜えるだけで、こんなにとはね。」
「でしょう。貴方のせいです。どうにかしてください。捲簾大将。」
「態度も相変わらずでけえな。・・・泣きみても知らねえぞ。」
「あっ・・・!うぅっ」
そうして捲簾は天蓬自身を手で扱いた。
露はさらに溢れ、扱くたびにぬちゃぬちゃと音を立てて、
天蓬の喘ぎ声と一緒にバスルームに響いた。
「ちょ・・・これじゃ、あの時と、同じじゃ、ないですか・・・っ」
喘ぎ喘ぎ天蓬が抗議する。
先ほどから、捲簾は天蓬自身を扱き上げては射精手前で止め、
落ち着いてはまた扱き、の繰り返しだった。
「泣きみても知らねえっつったろ。」
と意地悪に笑う捲簾を、潤んだ目で天蓬が睨む。
「入れて。」
「駄目。まだだ。もっと良い顔見せな。」
「!?・・・んんっ・・・あっ・・・あっ!」
「すげえな。目隠しもそそるけど。やっぱこっちがいいわ。」
天蓬は白い足をだらりと投げ出して、肩を大きく揺らしながら
息を切らし、何度目かの寸止めに耐えている。
そんな天蓬を見て捲簾はくつくつ笑うと、
天蓬の尻をひと撫でし、後ろに指を忍ばせる。
「あっ・・・!」
「あったけ・・・さすが、こっちも良い具合だな。
もう指3本になってんの、分かる?」
「も、指は、いいですから・・・!」
「んな顔で睨むなって。」
そう言って、限界が近い天蓬を押し倒し、捲簾自身を挿入する。
「・・・っ!!」
下半身に襲ってくる圧迫感に声が出ない。
焦がれて焦がれてやっと自分の中にきたモノが
熱くて気持ちよくて気が狂いそうだった。
もはや体中がこの男を求めている。
天蓬はぎゅっと捲簾を抱きしめると足を絡ませ、
下半身に力を入れて締め付けてやった。捲簾が慌てる。
「ちょ・・・おまっ・・・やめろ。」
「お返しです。もう・・・焦らすのは、無しでお願いします。」
セックスの最中に、捲簾自身を締め付けてそんな風に
命令する姿は、今まで捲簾が抱いたどの女より艶かしいし美しかった。
「・・・わーったから、力抜けっつの・・・!」
天蓬が力を抜くと、捲簾は待っていたかのように激しく突き上げる。
「あっ・・・良い、です、・・・もっと!」
そう言って仰け反る首筋を、捲簾は痕が残るくらい強く吸う。
「だめ・・・です。もう、イキそう・・・。」
「俺もあんまり保たねえ。一度イッとくか。」
「あっ・・・ん・・・んんっ!」
捲簾が一段と力強い律動で突き上げると、まもなくビクリと
体を震わせて天蓬が精を吐き出す。その余韻で捲簾もまた、達した。
捲簾が自身を抜いて起き上がろうとする。
精液がトロリ・・・と流れる感覚にぞくぞくしながら、
「待って」と捲簾の腕をつかんだ。
「どこにも行きゃしねえよ。どうせ足りねえだろ。お互い。」
天蓬の手を取って、捲簾は自分の指を絡めるように繋ぐ。
とてもとても暖かい、捲簾の手。
「そうですね。早く次、してください。」
バスルームでふたり、くすくすと笑いながらまたキスをした。
天蓬は血の海に倒れながら、そんな事を思い出していた。
走馬灯がこれかと我ながら可笑しかったが、唯一口角が上がっただけだ。
体は、もう、動かない。
目の中に血が入って、視界が真っ赤だった。
「・・・待たせ、しました。」
『また、あとでな』
また、そんな事言って。
どうせまたすぐには来ないんでしょうね。貴方の事だから。
でもまた会える。
どんなに時間がかかっても。何十年でも何百年でも。
貴方はそういう人。
![]()
いいわけは今日(2011.6.18)の日記で。