「何?おサルちゃん反抗期?」
「あれ、人の事言えるんですか悟浄ー?」
「悪ィな」
「・・・え?」
月も出てない真っ暗な夜。
宿をそっと後にした悟浄は
暗闇の中に知った人間がいることを悟って、足を止めた。
「お前、本当にエスパーかよ。やなタイミングで出てきやがって。」
きつく睨みながら悟浄が言った。
その視線を受け止めて、闇の中の八戒は静かに言った。
「あのね悟浄、僕は超能力者でもなんでもないんですよ。
あなたがカミサマを追って出て行く事が分かっただけで。
タイミングもなにもないですよ。ずーっとここ通るの待ってたんですから。」
「重いんだよお前。じゃあなストーカー野郎。」
八戒は自分の横を何事もなかったかのように通り過ぎようとする
悟浄の手を取り、自分の頬にあてがった。
「なんだよ。行くなって言われても行くぞ俺は。」
そんなこと分かってますって。
わざとそんな顔してそんな言葉吐いて。
そんな全身で「ひとりで行かせろ」オーラ出して。
止めるなんて事できませんよ。
ついて行くなんて事もできませんけど。
女みたいにすがることができたら、どんなにいいでしょう。
いや良くないです。そんなのどっちもあなたに甘えてるだけですね。
あのカミサマって人の得体の知れなさも不気味で。
だいたいあんなの相手にして戻ってこれるんですか。
堪えられないんですよ。
あなたがいないなんて。
だた待つしかできないんですか。
いつから僕は悟浄依存症になっちゃったんでしょうねえ。
「本当嫌になる。」
「は?」
八戒を睨んでいた悟浄だったが
八戒がつぶやいた一言に、一瞬気が緩んだ。
その隙に、自分の頬にあてがっていた悟浄の手に八戒はキスした。
手の甲、指先へと舌を這わせる。
「・・・っ・・・やめろ八戒。」
無視して続ける。今度は指を口に含み、音をたててしゃぶった。
指先、指の間と丁寧に舐め上げる。
あなたの手が大好きなんです。
この長くて形のよい指が自分の中に優しく入ってきて
決まった所をなで上げてくれる時。
自分でも驚くくらい声を上げてしまいます。
そうするとあなたは意地悪そうに笑いますね。
そしてこの熱い手が僕のモノを触れば
すぐにぐっしょり濡れてしまいます。
先端を愛撫する時のいやらしい指の動き、
扱く時の心地よい強さといったら。
ねえ、またしてくださいよ。
あなたがそうしてくれるなら、どんな痴態でもさらせますよ。僕はね。
だから生きて帰って。
八戒は、5本の指すべてをしゃぶってから上目使いで悟浄を見た。
「続きはあなたが戻ったら。」
そう言おうと思ったが、結局言う事は出来なかった。
「じゃあな。」
いつもの優しい口調でそう言って、悟浄は闇の中に溶けていく。
八戒は悟浄が見えなくなってもしばらく
その場に立ち尽くしていた。
宿に戻ると、起きていないようで起きている三蔵が何か言いたげに
こちらに寝返りをうったが、八戒は無視して自分のベットに潜り込んだ。
翌日。
一行は悟浄を追って来た道を戻ることとなる。
八戒は自分の心がはやるのを抑えられない。
一緒に行くのは駄目でも追うのは良いですよね。
また空き缶を灰皿がわりに使って。
僕に追わせる口実でも作ったつもりですか。
いろいろ考えて、止める事も、一緒に行く事も、
必ず戻ってくると約束させる事もできなかったのに。
この人達といると、どうしてこんなに簡単に
自分のしたいことができるんでしょう。不思議。
まずあなたを一発殴って、そのあとどうしよう。
まずは満足するまで奉仕させて、
ぎりぎりまで焦らさせて、
根をあげるようなら
今度は足腰が立たなくなるまで貪ってやる。
八戒はアクセルをぐっと踏み込んだ。
1分1秒早く、悟浄に近づくために。
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目の前から去ろうとする悟浄に、言いたい事がひたすら言えない八戒。